・ロッテ首脳陣が泊まり込みで行った「コーチ育成講座」とは(文春オンライン)
なんつーか、井口監督以下首脳陣全員の本気度を感じた記事だった。
選手たちが自主トレに励んでいる1月中旬。千葉市内のホテルに井口資仁監督以下、一、二軍の首脳陣全員が集まった。ホテルに缶詰め状態で2日間にわたって行われたのは「コーチ育成講座」。新人選手に向けた講義はこれまでも行っていたが、コーチを対象にした講座は初の試みとなった。1日目が9時30分開始で18時30分まで。翌日は9時から18時まで。620社のコンサルティング実績を持つ組織戦略コンサルタントを講師に招いての泊まり込みの合宿である。
講座が始まる前にマイクを持った山室晋也球団社長は今回の目的を次のように語った。
「一気通貫の組織を目指しての活動。考え方、目線を合わせることでどういう風に選手を育成するのか、同じ方向へと全員が向かっていけるように考えることが大事だと思っています。これは一度で終わらせるのではなく年に数回、そして毎年行う事で強固で一貫性のある組織を作りたいと思っています」
井口監督が現役時代から感じていた言葉の重要性
マリーンズの選手育成方針に関する共通認識の確立。そしてコーチに求めるコミュニケーションの基礎知識を伝える作業となった。初の試みは成功に終わったようだ。コーチそれぞれが指導、選手の育成に関して考え方を持っていても、それを口にして他のコーチに伝える作業は新鮮だった。そして講師が発する言葉は自分の中で分かっていることが多くあっても改めて聞き、それをメモすることで頭を整理する貴重な時となった。
元々、コミュニケーション重視のチーム作りを掲げていた井口監督も充実した表情でホテルを後にした。それは自分の考えと、講座で聞いた話が一致していたことにより確信を得たから。そして自身を支えることになるコーチ陣が選手指導に対して熱い想いと持論を持っていることを再確認できたことも大きかった。
「コミュニケーションの大事さを改めて感じたね。言葉の力は大きい。伝える力って野球の技術論の前に必要だと思う。選手がやる気をなくすのか、モチベーションが上がるのかは伝え方ひとつで、同じ言葉を使っても場面や相手によって受け取り方は違う。そういうところは自分でも勉強していきたいと改めて思った」
選手たちが「自主トレ」をしてる間に、監督コーチ陣も自ら「自主トレ」というのはあまり聞いたことがないなー。
いや、実際自主トレっていったって、ハワイとか沖縄とかは無理だろうけど、自チームの練習場だったら片隅でじーっと見てたりする指揮官やコーチはいるそうなんですけどね。昔は自主トレではなく、1月ぐらいから選手のトレーニングに監督やコーチが一緒に居てあれこれ指導してたそうですしね。今は契約上の問題からダメらしいんですけど。
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昨年まで「現役」だった井口監督だからできること。
で記事は続きます。
井口資仁監督は昨年、現役を引退。ここ数年はプレーヤーとしてグラウンドに立ち続けながらも、達観した目線でコーチと若い選手たちを見ることも心がけていた。すると今まで見落としていた色々な事に気が付いた。モチベーションが上がっていた選手がコーチのちょっとした一言によって一瞬で気持ちを落としてしまうことがあった。たわいもない一言だったが、ある側面からじっくりと考えると、それは確かに気持ちよくプレーをすることを妨げた一言。それは日常生活でもよくある。自分では傷つけるつもりはなくても、ちょっとした一言が相手を不快にすることがある。それはどんな事か。いろいろと考え、自分なりに考えをまとめる時間を作った。
「そういうこともあって、ここ何年間かは、若い選手に伝えるときに僕も言葉を大事にしてきた。そして監督になった今、言葉はこれからもっと大事になってくるところ。僕がコーチに伝えるのも、コーチが選手に伝えるのもそうだと思う」
何どもうなずくように講座を聞いていた井口監督は終了後も自然とコーチ陣と今後の方針や練習方法について話し合っていた。指揮官が43歳。そしてコーチ陣も40歳代が多い若い組閣。若いがゆえの12球団屈指のコミュニケーション力でチーム力向上を狙う。
確か今年のロッテの首脳陣は、金森コーチを除くとほとんどが40代の若い人たちばかり。それこそ、1990年台2000年台にデビューして、日本プロ野球界を牽引してきた人たちばかり。他チームでのコーチ経験がある人がほとんどなんですが、こうして一同に介してコミュニケーションをしてやっていくってのは、むしろ井口監督が昨年まで現役だったから「こういうのをやりたいんですけど」と気づいたのかもしれないですね。
で、井口氏が「選手」の頃でも最後の数年はむしろコーチ陣の方が年齢が近いってこともありましたし。ゆえにコーチの気持ちも、選手の気持ちもわかる立場に居て、ひょっとしたら将来、監督やコーチになった際には「こういうふうにしよう。こういうふうにやるのはやめよう」という考えを持ってたのかもしれないですね。さすがに引退して即監督になるってのは予想だにしなかったんでしょうけどね(苦笑)。
と考えると、この数年、特に40歳からの引退までの3シーズンは、基本的に秋季キャンプは浦和などでの調整を、春季キャンプも自己調整である意味で「お前に任せる」的な放任をされてたがゆえに、1軍からなかなかお呼びがかからなかった2軍の選手たちと一緒にトレーニングできたってことが、いわば「コーチとして経験していた」ような擬似的な経験を積めたのかもしれませんね。ま、個人的には、井口氏が引退したら、伊東監督・井口助監督で2年ほど経験を積ませてから監督職を禅譲するのかなーって思ってたんだけどなあ(笑)。
これは野球だけではなく、何にでも応用ができそうだ。
で、記事の最後の部分。これを読んで「ああ、ロッテ球団は一年二年じゃなくて長い目で立て直そうとしてるんだな」という気概のようなものを感じてやまなかったですねー。
最下位に沈んだチームを立て直すために
講座が行われたホテルの会議室を覗くと壁にはコーチのあるべき姿が描かれた紙が多数、貼られていた。一部を抜粋する。
「チームにとってGOODコーチとはなにか」
(1)チームへの愛 (2)勝利へのこだわり (3)全体の利益を考える (4)選手情報を共有 (5)自律的コーチ「コーチの7つの症候群に陥らない」
(1)抱え込み (2)近視眼 (3)押しつけ (4)自分がファースト (5)ベタベタ (6)やっているつもり (7)BAD&NO(ダメ出し)「チームの5つの壁の破壊」
(1)フロントと現場 (2)コーチと選手 (3)ポジション同士 (4)コーチ同士 (5)一軍と二軍その他にも理想のコーチ像、選手にとっての理想のコーチ像などが図などを利用して分かりやすく掲示されていた。その一つ一つを見てしまうと簡単なものかもしれないが、いざという時には忘れがちになってしまう事も多い。2018年が始まる1月という時に改めてコーチ全員で耳にし、口にしあったことはとても意義深く尊い。
マリーンズは1月30日、羽田空港から石垣島に向かって出発した。2月1日、キャンプイン。球春到来である。学んだことを実践し、組織を強く硬いものとする大事な期間となる。
「キャンプでも一言、一言を大事にコミュニケーションを深めていきたいね。これからシーズン中も自分がプラプラと選手ロッカーに行ったりしたいと思うし、お茶でも飲みたかったら監督室に来いと言ってあげるつもり。監督室は開けたままにする。そこは選手だけでなく、僕とコーチの関係もそうありたいし、コーチ陣にもそうしてほしい」と井口監督は改めてコミュニケーションファーストを掲げる。
現役引退後、すぐに監督就任。指導経験はないが強みがある。それは昨年まで同じユニフォームを着た選手として同じロッカーで選手と近くで接していたこと。何に悩み、どう苦しみ、何が好きで、何を嫌うかを把握していること。マリーンズがどのように最下位に沈み、なぜ1年間を通して浮上できなかったかを目の当たりにしていること。会話を重ねながら散在している問題を分析し、チームとして機能するように作り直していくつもりだ。
千葉ロッテマリーンズが掲げる育成目標は「自主自立の選手を育てる」。優勝を狙うチームを作るためには屈指の団結力と選手一人一人が自立し自主的にチームのためにプレーをする意識改革は欠かせない。新しいチームがどのように成長し、どのように生まれ変わっていくか。その過程もまたプロ野球ファンにとっては興味深く、注目すべき点となるはずだ。
いや、この「チームにとってGOODコーチとはなにか」と「コーチの7つの症候群に陥らない」、更に「チームの5つの壁の破壊」の部分、これは野球にも思いっきり役に立ちそうですし、日常生活や仕事、趣味のサークルとかでも非常に役に立つことが書いてあるなあって思いますね。特に、
「コーチの7つの症候群に陥らない」
(1)抱え込み (2)近視眼 (3)押しつけ (4)自分がファースト (5)ベタベタ (6)やっているつもり (7)BAD&NO(ダメ出し)
この部分ですねー。まあ少年野球とか高校野球の監督コーチでもこういうタイプはいましたしね。才能はそれほどでもないけども努力量と監督コーチの適切なアドバイスで超一流な選手になった例もあれば、その逆に誰もがこの選手の素質は凄いと認められても所属先の監督コーチの指導が正直アレで、大成せずに終わってしまった選手も少なくないですからね。
特にスポーツにしろ、仕事にしろ、趣味とかにしろ、先輩後輩とか、指導者と選手、上司と部下という関係になった際に、やはりその人同士とウマが合うかどうかはその人の性格や言動に大きくかかってくるでしょうし、ひどい場合、監督やコーチの好き嫌いだけで干されてしまって現役時代を棒に振る選手、会社勤めでいえば無能な上司のせいで(以下略)ってこともかなりある話ですし、そこらへんは今のうちに研修・自主トレとして、気をつけようや、という意味合いもあったんだろうなあと思いますね。
どんな順位だとしても温かい目で見守りたいなあ、今年は。
まあ去年は、伊東監督はまだしも(ただ負けたり失敗するとおっかない人だったそうで、選手たちには萎縮効果を生む結果にはなってたそうですけど…)、その周りのコーチ陣にアレな人が多くて、特にパラデスなんかは日本の投手の変化球、落ちる球に全く対応できなかった時に、最終的にどうにか立ち直ったのは、途中から加入したペーニャがいろいろとアドバイスをしてくれたから、だそうなんですね。
たぶん我々は知らないところで、ぶっちぎりの最下位を突っ走ってたチーム内ではいろいろとゴタゴタも内紛のようなものもあったんだろうなあ、と思いますし、それを未然に防ぐためにも、まあこういうと怒られるかもしれませんが、今年1年はとりあえず最下位を突っ走ることになるとしても、経験を積む為の1年として、我々がチームを育てていこうよ、という井口監督の意思表示と、同じ方向性に向かって皆で頑張る、というのが確認できただけでも、個々のチームは少しずついい方向に変わっていくのかなあ、と期待を持って、かつ、
温かい目で見守りたいなあと思いますね。
以上です。
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